東証一部上場企業であり、運用実績 [ago from=”1996/12/1″]以上のレンタルサーバーの老舗企業「さくらインターネット」と、さくらに比べると若干歴史は浅いものの(運用実績 [ago from=”2003/7/1″]以上)、国内シェア No.1 を誇る「エックスサーバー」。ネットビジネスを行う上で、どちらのレンタルサーバーを選べばいいか悩む人も多いでしょう。
ここでは、エックスサーバー株式会社の「エックスサーバー」と、さくらインターネット株式会社の共用サーバーである「さくらのレンタルサーバ」を、サービスの概要からサーバーの実際の性能まで、各種のベンチマークツールなどを用いた独自の調査内容を交えて比較してみました。
各サーバーの主な違いをざっくりまとめると、こんなイメージです。
- 「エックスサーバー」:常に最高のサーバースペックを維持しており、使い勝手やサポートの質も高い。運営も堅実ゆえに、国内シェアも NO.1 を維持している。
- 「さくらのレンタルサーバ」:20年以上の運用実績がありながら、これまで大きなトラブルもなく、安定性が高い。スペックや実力的には、他社よりもやや見劣りする。
以上から、以下のような結論になります。
- 月額500円以下の低価格帯なら ⇒ さくらのレンタルサーバ
- 本格的にネットビジネスをするなら ⇒ エックスサーバー
では、具体的に比較した内容の詳細を見ていきましょう。
エックスサーバーがおすすめな人
- 本格的にネットビジネスをしたい人
- 常に最新・最高スペックのサーバーを利用したい人
さくらのレンタルサーバがおすすめな人
- 格安プラン(500円以下のプラン)から試したい人
- 東証一部上場企業の安定さを求めている人
エックスサーバーとさくらのレンタルサーバのスペック~サービスの詳細を比較
最初に、エックスサーバーとさくらのレンタルサーバの主なサービス概要の違いから見ていきます。
主なサービス(ディスク容量・マルチドメイン数・データベース数など)の違い
さくらはプランのバリエーションが魅力 サイト量産には独自ドメイン数とデータベース数が無制限のエックスサーバーが向いている
会社名 | プラン名 | 初期費用 | 月額費用 | ディスク容量 | マルチドメイン数 | データベース数 | 転送量(GB/日) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
さくら | ライト | 無料 | 1,571円/年 | 100GB | 20個 | × | 無制限 |
さくら | スタンダード | 無料 | 524円 | 300GB | 200個 | 50個 | 無制限 |
Xserver | スタンダード | 無料 | 990円~ | 300GB | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
さくら | プレミアム | 無料 | 1,571円 | 400GB | 300個 | 100個 | 無制限 |
Xserver | プレミアム | 無料 | 1,980円~ | 400GB | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
さくら | ビジネス | 無料 | 2,619円 | 600GB | 400個 | 200個 | 無制限 |
Xserver | ビジネス | 無料 | 3,960円~ | 500GB | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
さくら | ビジネスプロ | 無料 | 4,714円 | 900GB | 500個 | 400個 | 無制限 |
Web サイトの表示の際に、サーバーから閲覧者の PC に向けて送られるデータ量のこと。Web サイトへのアクセス数が多く、
この転送量の上限をオーバーすると、アクセスが遮断され、サイトが閲覧できなくなってしまう可能性がある
両社における各プランと価格帯毎にディスク容量、マルチドメイン数(設置可能な独自ドメイン数)とデータベース数(WordPress などの設置可能数)、転送量(サイトのデータ通信容量/アクセス数に関連)の目安を一覧にしました。
相違点に注目してみると、まずさくらのレンタルサーバには全部で 5つのプランがありますが、エックスサーバーは 3つのみです。比較しにくいため並べていますが、1,000~4,000円台のプランは、月額料金はさくらのほうが500円高いです。(例:エックスサーバー「スタンダード」約1,000円:さくら「プレミアム」約1,500円))
また、2022年2月のリニューアル時に、さくらは全プラン初期費用を無料にしましたが、それに対抗するかのように、エックスサーバーも2022年8月に初期費用を無料にしました。
さくらには格安の100円台・500円台のプランがあるため、選択の幅からいうとさくらのほうが多いです。ただ、後述するようにさくらの場合、プラン変更ができないため、はじめは安いプランから始めて、後で上位プランに移行する、ということはできないので、注意が必要です。(解約して契約し直し、データの引っ越しの必要あり)
ディスク容量に関しては、おおむね同じくらいですが、利用可能な独自ドメインやデータベース数に関しては違いがみられます。
さくらも2018年に、利用可能な独自ドメイン数を一気に 5倍に増やしましたが、エックスサーバーは無制限なので、大量のサイトを運営するのならエックスサーバーのほうがベターです。また、WordPress などの CMS(コンテンツマネジメントシステム)で利用されることの多いデータベースの数も、現在はエックスサーバーがすべて無制限になったため、エックスサーバーが有利です。
最後の転送量は、どちらも 2022年初頭に全プラン「無制限」になりました。
なお、転送量が多いほど、大量のアクセスに耐えることができますが、サイトを量産する、少数サイトを安定して運営するなど、何を優先するかはサイトの運営方針などにもよりますので、総合的に判断する必要があります。
サーバースペック(CPU・メモリ・高速化機能など)の違いをチェック
サーバーのスペックはエックスサーバーが圧倒的に上 リソース保証も導入されてより安定性がアップ
エックスサーバー | さくらのレンタルサーバ | |
---|---|---|
Webサーバーソフト | nginx(エンジンエックス) | Apache |
記憶媒体 | オールNVMe(SSD) | SSD |
データベース | MariaDB | MySQL |
CPU | AMD EPYC(vCPU 128コア) 仮想 vCPU 6 / 8 / 10 コア | Intel Xeon(Cascadelake) |
メモリ | 1TB(仮想 4GB / 8GB / 12GB) ※リソース保証あり | 18MB~48GB |
PHP | CGIモード(FastCGI) | モジュールモード |
高速化機能 | 超高速環境「KUSANAGI」・ Xアクセラレータ機能・ HTTP/2・ ・サーバーキャッシュ機能 ・ブラウザキャッシュ機能 | HTTP/2 |
アクセス増対策 | ○(Xアクセラレータ機能) | ○(リソースブースト) +(コンテンツブースト機能(CDN) ※スタンダード以下は有料) |
WordPressの高速化チューニングが施された仮想マシンおよび、そのイメージで、世界最速クラスのWordPress実行環境と評価されている
次に、サーバー周りのスペックの違いをチェックしてみましょう。
高速処理が可能な nginx、オールSSD環境、MySQL の後継で高性能な MariaDB、最高スペックの CPU と大容量メモリなど、サーバーのスペックに関しては、圧倒的にエックスサーバーのほうが上です。高速化に関する機能としては、さくらで PHPモジュールモードが利用できますが、それ以外は特にありません。
一方、サイトへのアクセス数が増えた急増したときの対策としては、さくらでは一時的に転送量や同時アクセス数のリソース制限値を緩和する「リソースブースト」機能を、エックスサーバーでは「Xアクセラレータ」機能を利用できます。さくらは手動で設定を行う必要がある+利用後は 1週間利用できなくなりますが、エックスサーバーは自動的に処理を行ってくれます。
また、エックスサーバーは、他のユーザーの影響を受けやすい共用サーバーのデメリットを補う機能として、リソース保証を導入。CPU やメモリを仮想化して、各ユーザーが利用できるリソースが確保されるため、他のユーザーのアクセス増などにも影響を受けにくくなりました。
その他の主なサービス(独自SSL・バックアップ・サポート体制など)の違い
全体的に差は大きくないが、さくらはプラン変更不可 エックスサーバーはステージング機能がない
エックスサーバー | さくらのレンタルサーバ | |
---|---|---|
無料独自SSL | ○(Let’s Encrypt) | ○(Let’s Encrypt) |
WAF(Webアプリケーション ファイアウォール) | ○ | ○ |
バックアップ | ○(Web・メール・データベース :14日間分) | ○(Web&WPデータベース :最大8回分) |
バックアップからの復元 | ○(無料) | ○(無料) |
プラン変更 | ○(上位・下位) | × |
プラン変更のタイミング | 月単位 | × |
ステージング機能 | × | ○ |
電話サポート | ○ | ○ |
アダルトサイト | × | × |
データセンター | 国内(大阪) | 国内(東京/北海道) |
お試し期間 | 10日間 | 14日間 |
キャンペーン | 独自ドメイン永久無料、 初期費用無料など、 ほぼ年中実施 | ほぼなし |
次に、その他の仕様の中で違いがみられるものや、重要な機能やサービスと思われるものをいくつかピックアップし、比較してみました。
まず、無料の独自SSL や WordPressなどを保護するセキュリティ機能 WAF (Webアプリケーションファイアウォール)などはエックスサーバーが先行して対応しており、さくらはかなり遅れてようやく対応しはじめました。
プラン変更に関しては、エックスサーバーのみ対応していますので、さくらを利用していてアクセス数が増えた場合は、サーバーの全データを自分で引っ越ししなければなりません。これは結構な稼働がかかりますので、さくらを利用するうえで注意したい点です。
一方、さくらでは、サイトを公開する前に、実環境と同じ状況でテストサイトを作成できる、ステージング機能の提供も開始しています。これは、他社の共用サーバーでもほぼ提供されていませんが、非常に重宝する機能です。
なお、データセンターに関しては、さくらは北海道にも自社のデータセンターを持っていますが、これは VPS などで利用できるようになっており、共用サーバーは東京のデータセンターになるようです。
また、独自ドメイン永久無料や初期費用無料などのキャンペーンも、エックスサーバーは頻繁に実施していますが、さくらでは「○○周年記念」などのタイミング以外では、めったに実施されていません。
各サーバーのパフォーマンスを比較
では、次に各サーバーの実力を比較してみましょう。サーバーの性能はスペックだけではわかりません。そのため、実際に各サーバーを使用して検証を行った結果をもとに、実際の能力差を見てみたいと思います。
比較に使用するのは、当サイトで独自に調査したデータで、同じ価格帯のプランである、エックスサーバー「スタンダード」・さくらのレンタルサーバ「プレミアム」を使用した結果です。
(※ 2021年の計測データを基にしています。)
調査の詳細については、以下の各記事でご確認ください。
・Webサーバーの安定性を独自調査データで比較
・サーバー別のWordPress表示速度を独自調査データで比較
サーバーの安定性比較の概要
サーバー専用の監視ツールで 6か月以上計測した結果を比較
まず、サーバーで最も重要な「安定性」からチェックします。
調査は Webサーバーの監視ツール「Site24x7」を利用したもので、約 7日間× 6か月間に渡ってサーバーの稼働率と応答速度をモニタリングした結果を比較します。
「稼働率」は、サーバーが正常に動作していた時間帯の割合で、100%に近いほどより安定していると言えます。おおむね「99.99%」程度であれば優秀です。(※ 稼働率=(稼働時間×障害時間)÷稼働時間×100)
「応答速度」は、外部からサーバーに対してサイトのデータを送るよう命令を送った際(HTTPリクエスト)に、どのくらいで応答を返してきたかを計測したもので、数値が小さいほうが応答は速いため、より良いサーバーということになります。
Webサーバーの稼働率と応答速度を比較
1位のエックスサーバーと6位のさくら 稼働率はどちらもよいが、応答速度にかなりの差
サーバー名 (プラン名) | 項目 | 平均 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1位 | エックスサーバー | 稼働率 | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% |
応答速度 | 201.2 | 185.0 | 225.0 | 185.0 | 213.0 | 201.0 | 198.0 | ||
6位 | さくらのレンタルサーバ | 稼働率 | 99.999% | 100% | 99.992% | 100% | 100% | 100% | 100% |
応答速度 | 997.8 | 1,020.0 | 957.0 | 929.0 | 1,040.0 | 1,030.0 | 891.0 | ||
8社平均 | 稼働率 | 99.995% | 100% | 99.974% | 99.999% | 100% | 99.999% | 99.998% | |
応答速度 | 389.4 | 413.9 | 421.5 | 337.1 | 386.0 | 388.0 | 350.0 |
※無断転載禁止
※稼働率の単位は「%」、応答速度の単位は「ミリ秒」
他社の情報を記載していないため、数字だけでは比較しづらいと思いますが、全 8 社の成績として、順位を見るとその差が非常に大きいことがわかると思います。
ただ、さくらのレンタルサーバも稼働率は 99.999% で、8月で応答がなかった時間も 1分以内に収まっているので、かなり安定していると言っていいでしょう。
差が大きいのはやはり応答速度で、かなりの差が出ています。これは単純にさくら側の CPU やメモリを始めとするサーバースペックの低さをもろに示していると言っていいでしょう。
サイトの表示速度比較の概要
表示速度を計測する専用ツールで WordPress の表示速度を 6か月間計測して比較
次に、各サーバーに設置した WordPressサイトの表示速度を比較してみます。表示速度の計測には、同じく Site24x7 を使用しています。こちらも約 7日間× 6か月間に渡る調査結果です。
結果の数値については、小さいほうが速く表示できるということを意味しますので、数値が小さいほうがより良いサーバーということになります。(計測に使用したWebサイトのデータは共通)
WordPress の表示速度を比較
サイトの表示速度はやはりエックスサーバーがかなり高速 さくらを大きく引き離す結果に
順位 | サーバー名 (プラン名) | 平均(秒) | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3位 | エックスサーバー(スタンダード) | 3.85 | 3.23 | 4.66 | 2.76 | 4.33 | 4.13 | 3.98 |
8位 | さくらのレンタルサーバ(スタンダード) | 5.02 | 4.97 | 4.67 | 4.35 | 5.72 | 5.35 | 5.03 |
8社平均 | 4.02 | 3.66 | 4.39 | 3.26 | 4.52 | 4.19 | 4.12 |
※単位はすべて「秒」
表示速度では、エックスサーバーは 3位、さくらのレンタルサーバは最下位と、差がついてしまいました。
以前から実施している他の検証でも出ている結果ですが、さくらの場合は、データベースが絡む動作が他社と比較して遅い傾向があるため、やはりデータベースを利用している WordPress の検証結果にも表れている状況です。
共用サーバーはスペック競争が激しく、上位のサーバーは 1年に数回程度の大幅スペックアップを図っていることが多いのですが、さくらは数年に 1回といったペースなので、残念ながら、サーバーのマシンパワーが影響する項目には弱いですね。
まとめ
月額500円以下の低価格帯ならさくら 本格的にネットビジネスをするならエックスサーバーがおすすめ
以上、エックスサーバーとさくらのレンタルサーバについて、その概要から安定性・サイトの表示速度まで比較してみました。
パッと見で仕様を比較した時点では、それほどの差は感じないかもしれませんが、実際に検証データの比較をしてみると、安定性・表示速度、ともにエックスサーバーが圧倒的に高い数値を出していることがわかります。
これはやはり SSD、CPU、メモリなどのサーバー基本スペックの違いが大きいでしょう。
また、さくらインターネットは自社のデータセンターを持つ、東証一部上場企業であり、共用サーバーだけではなく、近年は高火力コンピューティングや IoT まで幅広い分野でサービスを展開している大企業です。共用サーバーはその売り上げの中でもごくごく一部でしかないでしょうから、経営資源をより大規模サービスに注いでいるであろうことは想像できます。
その分、エックスサーバーやロリポップ!など、共用サーバーを中心のサービスとして展開している企業と比べると、PHP の新バージョンの展開や無料の独自SSL など、最新技術のリリースは遅めで、かつ最低限のみといった印象があります。そのため、共用サーバーを選ぶのであれば、さくらインターネットはやや物足りない感じがするのも事実です。
結論としては、100円台・500円台のプランはエックスサーバーにはないため、格安プランを利用するのであれば、さくらを選ぶことになります。ただ、100円台のプランに関しては、ロリポップ! や スターサーバー のほうが、安定性とパフォーマンスがずっと上ですので、そちらもあわせて検討してみるといいでしょう。
そして、1,000円台以上のプランであれば、間違いなくエックスサーバーがおすすめです。
以上から、各サーバーはこんな人におすすめと言えます。
- 月額500円以下の低価格帯なら ⇒ さくらのレンタルサーバ
- 本格的にネットビジネスをするなら ⇒ エックスサーバー
エックスサーバーがおすすめな人
- 本格的にネットビジネスをしたい人
- 常に最新・最高スペックのサーバーを利用したい人
さくらのレンタルサーバがおすすめな人
- 格安プラン(500円以下のプラン)から試したい人
- 東証一部上場企業の安定さを求めている人