2018年4月に「さくらのレンタルサーバ」で一番人気の「スタンダードプラン」に、高速処理が可能な PHP モジュールモードが導入されました。また、あわせて Webサーバーのソフトが従来の「Apache(アパッチ)」から、より高速な「nginx(エンジンエックス)」に変更され、さらに CPU やメモリなどのスペックも向上しました。
さくらのレンタルサーバは、過去の検証でも WordPress などの CMS(コンテンツマネジメントシステム)を使用した場合のサイトの表示速度が遅めである傾向がみられました。
しかし、今回の「PHP モジュール」と「nginx」などによる高速化対策の導入が行われた結果、公式のパフォーマンステストで、最大16倍速くなっています。また、当サイトによる測定結果でも、実際にかなりの高速化が見られました。
ここでは、2018年に入ってからリリースされた、さくらのレンタルサーバの各機能の概要と、新機能の導入によりどのくらい安定性と表示速度がアップしたのか、その結果について解説していきたいと思います。
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2018年に入ってからのさくらの変更点概要
2018年に入ってから、さくらのレンタルサーバでは、ユーザーにとって非常にメリットの大きい、様々な機能をリリースしてきました。
特に、今回リリースされた PHP モジュールモードと nginx は、Webサイトのパフォーマンスにとても大きな影響を与える機能で、Webサイトの安定化と高速化が期待されます。
機能名 | 機能の概要 |
---|---|
バックアップ& ステージング機能 |
Webサイトのデータ+WordPress のデータベースのバックアップ機能、および、公開前のサイトや既存サイトの動作テストを行うためのステージングサーバー機能 |
PHP モジュールモード | WordPress などで利用されているプログラム言語 PHP を高速で処理できる機能(これまではビジネス向けの上位プランのみ利用可能) |
nginx (エンジンエックス) |
Webサーバーを動かすプログラム 従来の Apache(アパッチ)よりも大量のデータを高速で処理できる |
CPU・メモリの増強 | サーバーごとの CPU とメモリを大幅に増強 |
新デザインのコントロールパネル (ベータ版提供中) |
サーバーの設定などを行う、コントロールパネルのデザインを一新 |
マルチドメイン数& データベース数増加 |
1契約で設置可能な独自ドメイン数とデータベース(MySQL)数を増加 |
機能名 | |
---|---|
バックアップ& ステージング機能 | Webサイトのデータ+WordPress のデータベースのバックアップ機能、および、公開前のサイトや既存サイトの動作テストを行うためのステージングサーバー機能 |
PHP モジュールモード | WordPress などで利用されているプログラム言語 PHP を高速で処理できる機能(これまではビジネス向けの上位プランのみ利用可能) |
nginx (エンジンエックス) | Webサーバーを動かすプログラム 従来の Apache(アパッチ)よりも大量のデータを高速で処理できる |
CPU・メモリの増強 | サーバーごとの CPU とメモリを大幅に増強 |
新デザインのコントロールパネル (ベータ版提供中) | サーバーの設定などを行う、コントロールパネルのデザインを一新 |
マルチドメイン数& データベース数増加 | 1契約で設置可能な独自ドメイン数とデータベース(MySQL)数を増加 |
バックアップ&ステージング機能
これまでさくらのレンタルサーバでは、(ユーザー側のミスでサイトのデータなどを消してしまった場合に)復元するためのバックアップ機能は提供されていませんでしたが、今年に入ってその機能がリリースされました。バックアップ対象のデータは、Webサイトのデータ+WordPress のデータベースのみで、メールデータなどは対象外です。
また、「ステージング機能」は、サイトを公開する前に、実際のサーバー環境での動作を確認できる非常に便利な機能で、共用サーバーではまだあまり提供されていないため、貴重です。
PHP モジュールモードの導入

PHP モジュールモードは、WordPress などで使用されているプログラム言語である PHP の処理方法の一つです。
PHP の処理モードには、主に「CGI モード」と「モジュールモード」の 2つがありますが、モジュールモードは Webサーバー側で直接処理をするため、CGI モードよりも高速です。これまでさくらのレンタルサーバの低価格プランでは、CGI モードしか利用できませんでしたので、ユーザーにとってはありがたい機能です。
PHP モジュールモードと CGI モードの違いやパフォーマンスの差の詳細については、以下の記事を参照してください。

nginx(エンジンエックス)の導入

nginx(エンジンエックス)は、Webサーバーを動かすための基本のアプリケーションで、これまでの「Apache(アパッチ)」と比較して、より多くのデータを高速で処理できます。
これまで国内の共用サーバーでは Apache が主に使用されていましたが、近年はこの nginx へ移行するレンタルサーバーが増えています。
CPUとメモリも大幅に増強
今回はさらに、スタンダードプランにおいて、CPU とメモリの増強も行われています。


CPU | メモリ | |
---|---|---|
変更前 | Xeon E312xx (4コア4スレッド) | 18GB |
変更後 | Xeon E5-2650V3 (10コア/20スレッド) | 48GB |
CPU はコア数やスレッド数が多いほど、メモリも数字が大きいほど、こなせる処理量が多くなるので、より高速になります。CPU は当サイトの検証でもトップレベルのエックスサーバーと同じものになっていますので、かなりの増強だということがわかります。
コントロールパネルも格段に見やすくなった


コントロールパネルも、まだベータ版ではありますが、新デザインのものが利用できます。さくらのコンパネは、長らくデザインが古いままで、使い勝手は悪くないものの、分類など少しわかりにくい部分がありましたが、新デザインでは、非常に見やすく、直感的にもわかりやすくなっています。(ただ、まだ少し動作は重い感じです)
マルチドメイン数とデータベース数も一気に増量
一契約で利用可能なドメイン数(マルチドメイン数)と、CMS などに利用できるデータベース数(MySQL)も一気に増えました。これで運営サイト数を従来の5倍まで増やせますので、かなりの大盤振る舞いですね。
マルチドメイン数 | データベース数 | |
---|---|---|
スタンダード | 20 → 100 | 500MB → 1.5GB |
プレミアム | 30 → 150 | 1GB → 3GB |
ビジネス | 40 → 200 | 2GB → 6GB |
ビジネスプロ | 40 → 200 | 3GB → 9GB |
今回実施した測定条件の詳細
さて、早速 PHPモジュールモード+nginx でのパフォーマンス結果を見ていきたいと思いますが、まずは測定した条件を挙げておきます。
項目 | 詳細 |
---|---|
利用プラン名 | スタンダードプラン |
WordPress のバージョン | ver.4.9.5 (以前のデータは 4.9.4) |
WordPress のテーマ | Twenty Seventeen |
WordPress プラグイン | WP Multibyte Patch / Akismet / Hello Dolly |
コンテンツ内容 | WPテーマユニットテスト (すべてのコンテンツをトップページに表示した状態 |
測定ツール | monitis 測定元サーバー(東京) |
測定期間 | 7日間 |
測定内容 (安定性) | httpリクエストへの応答状況 (60秒毎にリクエスト実施/10秒でタイムアウト)) |
測定内容 (表示速度) | WordPress サイトの表示速度 (20分ごとに計測を実施) |
唯一、WordPress のバージョンが異なりますが、マイナーアップデートですし、パフォーマンスへの影響はないと考えています。また、プラグインに関しては、WordPress をインストールした際に導入されているもので、特に意味はありません。
コンテンツには、テスト用に提供されている WPテーマユニットテストというデータを利用しています。テキストもほどほどの量があるほか、画像や Youtube なども貼り付けられているため、実際のブログなどに近いデータ量になっています。
モジュールモードとnginxで安定性が大幅にアップ!
今回のアップグレードの結果を確認するために、モジュールモード+nginx 導入後の環境と、今年3月に行った前の環境(PHP CGIモード+Apache)での測定データを比較します。
まず、Webサーバーの応答速度(httpリクエスト)について見てみましょう。
「応答なし回数」は、Webサーバーから応答が返らなかったり、大幅に遅延したケースの回数で、回数が少ないほうが安定しています。
また、「平均応答速度」「最速」「最遅」は、Webサーバーから応答が返ってくるまでの速度で、数値が小さいほど応答が速いため、安定性も高いことを意味しています。(単位はすべて「ミリ秒」)
PHP モード | 応答なし回数 | 平均応答速度 | 最速 | 最遅 |
---|---|---|---|---|
CGI モード | 8 | 1246.5 | 906.0 | 9779.0 |
モジュールモード +nginx | 0 | 840.3 | 605.0 | 3313.0 |
差分 | +8 | +406.2 | +301.0 | +6466.0 |
※単位は「ms」(ミリ秒) ※無断転載禁止
まず、「応答なし回数」ですが、従来の「PHP CGI モード」+「Apache」の環境では、8回ほど応答がないか、遅延していましたが、今回はそれがゼロと、格段に安定性がアップしました。
また、応答速度もすべて速くなっており、平均レベルでも従来の約 2/3 の速度にまで縮まっており、かなりいい感じです。
こちらは、Webサーバーのパフォーマンスを測定しているので、主に Webサーバーのソフトである、nginx への変更の影響が大きいと考えられます。
さらにWordPress の表示速度もアップ!
続けて、WordPress を使用したサイトの表示速度にどれくらい変化があったのかを確認してみましょう。
WordPress は、言語として PHP を使用しているため、PHP のモードの違いによる影響は大きいです。また、WordPress はデータベースも使用しているため、データベースからのデータの読み込み速度に関しては、Webアプリケーションである nginx の処理速度の影響もあると思います。
表示速度の結果は、単純に数値の小さいほうが表示は速いことを意味します。
PHP モード | 平均応答速度 | 最速 | 最遅 |
---|---|---|---|
CGI モード | 2.67 | 1.80 | 30.01 |
モジュールモード +nginx | 1.91 | 1.44 | 15.84 |
差分 | +0.76 | +0.36 | +14.17 |
※単位は「ms」(ミリ秒) ※無断転載禁止
こちらもすべての数値において、かなりの速度向上が見られました。同じように 2/3 程度にまで速度が向上しています。
モジュールモード+nginx+スペックアップは抜群の効果がありました。
まとめ
以上のように、「PHP モジュールモードと nginx(エンジンエックス)の導入+サーバースペック増強」により、さくらのレンタルサーバのパフォーマンスは大きく向上しました。
レンタルサーバーの最大手ながら、サーバー基盤の大きな変更には割合慎重だったさくらインターネットが、ここにきて次々とユーザーにとってメリットの大きい改善を行ってくれたのは非常に嬉しい出来事です。
当サイトの検証でしている評価の高いサーバーと比べると、まだ少し見劣りする部分はありますが、「バックアップ&ステージング機能」など、他社ではまだあまり導入されていない機能も使えるようになりましたので、十分ネットビジネス用サーバーとしておススメできるレベルになったと言えるでしょう。