ネットビジネス向けのレンタルサーバーの中で、名実ともに高い人気を誇っているシェア No.1 の「エックスサーバー」。一方、2016年にリリースした新進気鋭の「mixhost(ミックスホスト)」も着実にシェアを伸ばしつつあります。
質実剛健で既存ユーザーを大切にするエックスサーバーに対し、新しいテクノロジーを多数引っ提げてきた mixhost。どちらを契約すべきか悩む人も多いでしょう。
そこで、エックスサーバー株式会社の「エックスサーバー」と、アズポケット株式会社の「mixhost」を、料金や細かい仕様を含めたサービス概要から、サーバーの実際の性能まで、各種のベンチマークツールなどを用いた独自の調査結果を交えて、徹底的に比較してみました。
各サーバーの主な違いをざっくりまとめると、こんな感じになります。
- エックスサーバー:サーバーの性能は高め、電話サポートもあって、初心者でも使いやすい
- mixhost:機能が豊富だが、やや玄人向け。アダルトサイトの運営も可能で、高価格帯のプランでは大量のアクセスがあるサイトでも利用できるなどのメリットもあり
以上から、以下のような結論になります。
・初心者・安定性重視向け ⇒ エックスサーバー
・中級者以上 or アダルトサイト向け ⇒ mixhost(ミックスホスト)
では、具体的に比較した内容の詳細を見ていきましょう。
エックスサーバーと mixhost のスペック~サービスの詳細を比較
主なサービス(ディスク容量・マルチドメイン数・データベース数など)の違い
エックスサーバーは初期費用分だけ料金が高め、スペックは現状同等に
会社名 | プラン名 | 初期費用 | 月額費用 | ディスク 容量 | マルチ ドメイン数 | データ ベース数 | 転送量 (GB/日) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
mixhost | スタンダード | 無料 | 990円~ | 300GB | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
エックスサーバー | スタンダード | 無料 | 990円~ | 300GB | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
mixhost | プレミアム | 無料 | 1,980円~ (※495円~) | 400GB | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
エックスサーバー | プレミアム | 無料 | 1,980円~ | 400GB | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
mixhost | ビジネス | 無料 | 3,960円~ (※990円~) | 500GB | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
エックスサーバー | ビジネス | 無料 | 3,960円~ | 500GB | 500個 | 400個 | 無制限 |
Web サイトの表示の際に、サーバーから閲覧者の PC に向けて送られるデータ量のこと。Web サイトへのアクセス数が多く、この転送量の上限をオーバーすると、アクセスが遮断され、サイトが閲覧できなくなってしまう可能性がある
最初に、エックスサーバーと mixhost の主なサービス概要の違いから見ていきましょう。
両社における各プランと価格帯毎にディスク容量、マルチドメイン数(設置可能な独自ドメイン数)とデータベース数(WordPress などの設置可能数)、転送量(サイトのデータ通信容量/アクセス数に関連)の目安を一覧にしました。
まず、プラン数はどちらも 3プランになりました(mixhost は以前 6プランあり)。エックスサーバーにはエックスサーバービジネスという上位サービスが用意されています。
料金面では、以前は mixhost のみ初期費用無料+月額料金も少し安めだったのですが、エックスサーバーも初期費用無料にし、逆に mixhost が月額料金を値上げしたため、価格は全プランまったく同じになりました。
ただ、mixhost で常時行っている割引を利用すると、初回契約時の料金が半額になります。とはいっても、これはあくまでも初回契約時に支払った料金分だけですので、それ以降は通常料金になることには注意が必要です。
サーバースペック(CPU・メモリ・高速化機能など)の違いをチェック
リリース当初は大きく差をつけていた mixhost も、現在はエックスサーバーに追い抜かれた状況
エックスサーバー | mixhost | |
---|---|---|
Webサーバーソフト | nginx(エンジンエックス) | LiteSpeed |
記憶媒体 | オールNVMe(SSD) | オールSSD |
データベース | MariaDB | MariaDB |
CPU | AMD EPYC(vCPU 128コア) 仮想 vCPU 6GB / 8GB / 10GB コア ※リソース保証あり | Intel Xeon 36コア72スレッド (仮想 6/ 8/ 10コア) |
メモリ | 1TB(仮想 4GB / 8GB / 12GB) ※リソース保証あり | 8GB/ 12GB/ 16GB |
PHP | CGIモード(FastCGI) | LiteSpeed LSAPI (※モジュール版と同様の性能) |
高速化機能 | 超高速環境「KUSANAGI」 ・ Xアクセラレータ機能・ HTTP/2・ ・サーバーキャッシュ機能 ・ブラウザキャッシュ機能 | HTTP3・QUIC (LiteSpeed Cache) |
アクセス増対策 | ○(Xアクセラレータ機能) | △(プラン変更で対応可能) |
- 超高速環境「KUSANAGI」:WordPressの高速化チューニングが施された仮想マシンおよび、そのイメージで、世界最速クラスのWordPress実行環境と評価されている
- LiteSpeed Cache:WordPress 用の表示データをキャッシュし、高速表示する LiteSpeed 専用のプラグイン
次に、サーバー周りのスペックの違いをチェックしてみましょう。
サーバーソフトの LiteSpeed、MariaDB など、新しい機能に関しては、mixhost のほうが先に導入しており、他社ではまだ導入していないシステムもふんだんに盛り込んであります。また、2017年12月には、高速化機能の「QUIC」や「HTTP/3」も日本で最初に導入しました。
一方、エックスサーバーも、サーバーソフトを Apache から、より高速処理が可能な nginx(エンジンエックス)に変更したり、MariaDB を導入するなどで対抗しているほか、超高速環境「KUSANAGI」の導入、独自開発の「Xアクセラレータ」機能(Webサイトの表示速度向上と同時アクセス数の大幅拡張する)など、盛りだくさんです。
CPU とメモリに関しては、mixhost では CPU やメモリなどのリソースが仮想化され、独立している形になっているため、他のユーザーの影響を受けにくいシステムになっています。一方、エックスサーバーも、ユーザー毎に CPU やメモリのリソースを確保する「リソース保証機能」によって、同じ構成になったと考えていいでしょう。
そのため現状は、リソース面はメモリを除きスペックの高いエックスサーバーのほうが上と言えます。
(※数値が大きいほうがスペックが上)
その他の主なサービス(独自SSL・バックアップ・サポート体制など)の違い
プラン変更は mixhost のほうが柔軟に行える 電話サポート・無料お試しはエックスサーバーのみ提供
エックスサーバー | mixhost | |
---|---|---|
無料独自SSL | ○(Let’s Encrypt) | ○(COMODO社) |
WAF(Webアプリケーション ファイアウォール) | ○ | ○ |
バックアップ | ○(Web・メール・データベース :14日間分) | ○ |
バックアップからの復元 | ○(無料) | ○(無料) |
プラン変更 | ○(上位・下位) | ○(上位・下位) |
プラン変更のタイミング | 月単位 | 即時(日割り) |
電話サポート | ○ | × |
アダルトサイト | × | ○ |
データセンター | 国内(大阪) | 国内 |
お試し期間 | 10日間 | なし |
キャンペーン | 独自ドメイン永久無料、 初期費用無料など、 ほぼ年中実施 | 独自ドメイン永久無料 プレミア以上半額など |
次に、その他の仕様の中で違いがみられるものや、重要な機能やサービスと思われるものをいくつかピックアップし、比較してみました。
主な違いは、「プラン変更のタイミング」と「電話サポートの有無」、「アダルトサイトの運営可否」、「お試し期間の有無」が挙げられます。
プラン変更自体は、どちらのサーバーも上位・下位に変更が可能ですが、プラン変更のタイミングについては、mixhost のほうがより柔軟性が高く、即時変更を反映できます。また、料金も日割りで計算してくれますので、例えば一時的にサイトのアクセスが急上昇した場合に、1週間だけ上位プランに変更するといったことも可能です。
一方、サポートに関しては、mixhost は電話サポートを行っておらず、Web 上からの問い合わせのみ対応しています。返答はメールでも届きますが、回答の速さに関してもエックスサーバーのほうが上です。(エックスサーバーは、必ず当日中に返信がありますが、mixhost は数日返信がないことも)
基本的にどちらも回答の質は高いのですが、人によるばらつきが少ないという意味で、個人的にはエックスサーバーのほうが質は上だと感じます。
掲載可能なコンテンツについては、mixhost では、アダルトサイトの運用が可能です。ただ、その分夜間のパフォーマンス低下の影響は懸念されます(アダルトサイトは夜間にアクセスが急増するため)。
お試し期間については、mixhost はリリース当初は 30日間と非常に長かったのですが、現在はお試し期間がなくなり、30日間返金保証のみになりました。
各サーバーのパフォーマンスを独自測定データで比較
では、次に各サーバーの実力を比較してみましょう。サーバーの性能はスペックだけではわかりません。そのため、実際に各サーバーを使用して検証を行った結果をもとに、実際の能力差を見てみたいと思います。
比較に使用するのは、当サイトで独自に調査したデータで、エックスサーバーは「スタンダード(旧X10)」、mixhost は「スタンダード」プランを使用しての結果です。
(※ 2021年の計測データを基にしています。)
調査の詳細については、以下の各記事でご確認ください。
・Webサーバーの安定性を独自調査データで比較
・サーバー別のWordPress表示速度を独自調査データで比較
安定性比較の概要
サーバー専用の監視ツールで 6か月以上計測した結果を比較
まず、サーバーで最も重要な「安定性」からチェックします。
調査は Webサーバーの監視ツール「Site24x7」を利用したもので、約 7日間× 6か月間に渡ってサーバーの稼働率と応答速度をモニタリングした結果を比較します。
「稼働率」は、サーバーが正常に動作していた時間帯の割合で、100%に近いほどより安定していると言えます。おおむね「99.99%」程度であれば優秀です。(※ 稼働率=(稼働時間×障害時間)÷稼働時間×100)
「応答速度」は、外部からサーバーに対してサイトのデータを送るよう命令を送った際(HTTPリクエスト)に、どのくらいで応答を返してきたかを計測したもので、数値が小さいほうが応答は速いため、より良いサーバーということになります。
Webサーバーの稼働率と応答速度を比較
応答速度も稼働率も、ともにエックスサーバーが上 mixhost の稼働率は平均以下の結果に
サーバー名 (プラン名) | 項目 | 平均 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1位 | エックス サーバー | 稼働率 | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% |
応答速度 | 201.2 | 185.0 | 225.0 | 185.0 | 213.0 | 201.0 | 198.0 | ||
7位 | mixhost | 稼働率 | 99.974% | 100% | 100% | 99.844% | 100% | 100% | 100% |
応答速度 | 362.5 | 363.0 | 414.0 | 370.0 | 344.0 | 339.0 | 345.0 | ||
8社平均 | 稼働率 | 99.995% | 100% | 99.974% | 99.999% | 100% | 99.999% | 99.998% | |
応答速度 | 389.4 | 413.9 | 421.5 | 337.1 | 386.0 | 388.0 | 350.0 |
※稼働率の単位は「%」、応答速度の単位は「ミリ秒」
まず、応答速度に関しては、mixhost がリリースから間もない頃の調査ではエックスサーバーと同等レベルだったのですが、その後は徐々に差がついて行き、現在はすべての月においてエックスサーバーがかなり上という結果になっています。
また、稼働率に関しては、mixhost が 8月に長いダウン(約 16分間)が発生したため、トータルでも 99.99% 未達となりました。
ダウンしたのは 8月だけだったので、これをたまたまと見るか、1回で 15分のダウンを長いと見るかは、なかなか判断が難しいところですが、mixhost は SLA(品質保障制度)を提供しており、99.99%以上は返金対象なので、8月は返金対象月になっていますね。
以上から、安定性に関してはエックスサーバーのほうが上と言えるでしょう。
サイトの表示速度比較の概要
速度を計測する専用ツールで WordPress の表示速度を 6か月間計測して比較
次に、各サーバーに設置した WordPressサイトの表示速度を比較してみます。表示速度の計測には、同じく Site24x7 を使用しています。こちらも約 7日間× 6か月間に渡る調査結果です。
結果の数値については、小さいほうが速く表示できるということを意味しますので、数値が小さいほうがより良いサーバーということになります。(計測に使用したWebサイトのデータは共通)
WordPress の表示速度を比較
サイトの表示速度はどちらも速く、大きな差はなかった
順位 | サーバー名 (プラン名) | 平均(秒) | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3位 | エックスサーバー(スタンダード) | 3.85 | 3.23 | 4.66 | 2.76 | 4.33 | 4.13 | 3.98 |
5位 | mixhost(スタンダード) | 3.98 | 3.68 | 5.10 | 2.80 | 4.32 | 4.09 | 3.91 |
8社平均 | 4.02 | 3.66 | 4.39 | 3.26 | 4.52 | 4.19 | 4.12 |
※単位はすべて「秒」
表示速度に関しては、グッと差が縮まり、エックスサーバーは 3位、mixhost は 5位という結果になりました。
月によっては、mixhost がエックスサーバーを上回ることもありましたので、こちらは同等と考えていいかもしれません。
なお、高速化機能をフルに活用した場合は、エックスサーバーがかなり高速です。
まとめ
どちらもサーバーの実力は高いが、mixhost がやや安定性に欠ける点が気になることと、電話サポートなどがない点が初心者にはネック 基本的にはエックスサーバー、アダルトサイト向けには mixhost がおすすめ
以上、エックスサーバーと mixhost について、その概要から、実際の「安定性」と「サイトの表示速度」まで比較してみました。
仕様・サーバーの実力ともに非常に高く、基本的にはどちらを選んでも後悔するレベルではないと思います。
ただ、やはり若干気になるのは、mixhost のほうが安定性にやや劣る印象がある点です。
mixhost は、まだサービス開始から日が浅いということもあり、20年近くの運営実績のあるエックスサーバーと比べると信頼性にはやや欠けます。実際に2017年2月には大規模な障害も発生しました。その際の対応は非常に良かったので、印象は悪くはありませんが、もう少し様子を見たい気もします。
それから、mixhost はリリースしたてのサービスということもあり、ヘルプなどの情報も初心者でも迷わないといえるほど充実していませんし、リアルタイムでヘルプをしてくれる電話サポートもありません。問題を解決するときに頼りになる、ネット上の情報も、まだエックスサーバーほどは多くありません。
また、管理画面が cPanel というシステムになっていて、柔軟性が高い反面、多機能すぎてわかりづらかったり、項目の名称が独特だったり、一部は英語のままだったりするので、初心者にとってはとっつきづらいという点もあります。こういった点においては、やはりエックスサーバーのほうが初心者には向いています。
一方、mixhost は多機能であり、プラン変更が柔軟であること、アダルトサイト OK というメリットがあります。そのため、完全な初心者でなければ、mixhost も十分オススメできるサーバーです。
以上の結論から、エックスサーバーと mixhost は、それぞれこんな人におすすめだと言えます。
・初心者・安定性重視向け ⇒ エックスサーバー
・中級者以上 or アダルトサイト向け ⇒ mixhost(ミックスホスト)
エックスサーバーがおすすめな人
- 安定性を重視する人
- 初心者や技術的なことにあまり自信がない人
mixhost がおすすめな人
- 多機能で速いサーバーが好きな人
- アダルト系のサイトを運営したい人