2022年2月16日に、レンタルサーバー界最大の老舗「さくらインターネット」のレンタルサーバー全プランの大幅リニューアルを実施しました。
会社としての知名度や東証一部上場企業という安定性の高さがウリのさくらインターネットですが、レンタルサーバープランの大幅リニューアルは他社と比較するとのんびりペースで、4年ぶりになります。
しかし、今回のリニューアルでは、サーバー基盤の刷新があり、数値的にもしっかり向上した結果は見られました。また、料金面でも業界に非常に大きな影響を与えた更新がありました。
すでに半年くらい経過してしまいましたが、測定データはしっかり取得してありましたので、以下にその詳細を解説していきたいと思います。
ここが変わった!さくらのレンタルサーバの全プランリニューアル概要
オールSSD、サーバー基盤刷新はもちろん、初期費用無料、転送量無制限など、業界に大きな影響を与えた大幅リニューアルを実施
まず、サーバーのスペック自体に関してですが、記憶域用のドライブを従来の HDD から SSD に変更したほか、機材の刷新を行っています。
SSD はやはり高速処理が可能なため、データの読み書きの時間が短縮され、Web サイトの高速化にもつながります。自社の調査では、「さくらの従来のサーバーと比較して5倍の高速化を実現」したということです。
実際に「スタンダード」プランの管理画面を確認したところ、メモリは以前と同じ 48GBのままでしたが、CPU は刷新されていました。
(”Intel(R) Xeon(R) CPU E5-2650 v3 @ 2.30GHz” → “Intel Xeon Processor (Cascadelake)”)
次に、ディスク容量も各プランそれぞれ増加しています。
特に、月額 100円クラスの「ライト」プランでも100GB もの容量を使えるというのは、かなり画期的ですね。
さらに、今回衝撃的だったのは、やはり「初期費用」が無料になったこと。
従来、サーバーを契約した場合、サーバー側の初期設定を行う手間がかかることから、長い間初期費用を支払うことが慣例のようになっていました。
しかし、現在は申し込みからサーバー側の初期設定、ユーザーへの通知など、一連の作業に手作業が必要なく、自動的に行われるようになっていることもあってか、初期費用を無料で提供するレンタルサーバーも増えていました。
その影響もあってか、とうとう一番の老舗である、さくらさんも初期費用の無料化を決定したようです。
翌月の2022年3月2日には、すべてのプランの「転送量」を無制限にするという、さらに大きな発表を行いました。
この大きな決断によって、レンタルサーバーシェア No.1 のエックスサーバーをはじめ、「初期費用の無料化」、および「転送量の無制限化」が相次いでいます。やはり、レンタルサーバー業界の競争は熾烈を極めていますね。
Web サイトの表示の際に、サーバーから閲覧者の PC に向けて送られるデータ量のこと。Web サイトへのアクセス数が多く、
この転送量の上限をオーバーすると、アクセスが遮断され、サイトが閲覧できなくなってしまう可能性があるが、その上限を撤廃した。
(※ ただ、過剰な通信が他のユーザーへ大きな影響を与えると判断された場合は、制限される可能性はあります)
「スタンダード」プランの表示速度をリニューアル前後で比較
WordPress の表示速度は確実にアップ!平均で約0.6秒の高速化に成功
では、さっそく今回の変更でどのくらい実力アップしたのかを見てみましょう。今回は、これまで継続的に調査を行ってきた、「スタンダード」プランの調査を行いました。
まずは、表示速度の違いから比較していきます。
いつものように WordPress を使用したサイトの表示速度がどれくらい変化したかを確認します。
ここではリニューアル前後で約 7日間測定した結果を比較していますが、数値が小さいほうが表示が速いことを示しています。
(※計測には、Site24x7 のサービスを使用)
リニューアル前 | リニューアル後 | |||
---|---|---|---|---|
計測月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 |
平均表示速度 (秒) | 3.12 | 3.57 | 2.77 | 2.72 |
平均 | 3.35 | 2.75(0.6秒の高速化) |
リニューアル前は 3秒台ですが、リニューアル後は 2秒台になり、平均で 0.6 秒の高速化が見られており、しっかり表示速度がアップしたことが確認できました。
また、実際にサーバーを触った体感でも、管理画面や WordPress の動作が以前よりも軽快になっていることが実感としても感じました。
「スタンダード」プランの安定性をリニューアル前後で比較
稼働率は以前と同様に高い状態で推移。サーバーの応答速度は確実にアップ!
次に、Webサーバーの応答速度についても見てみましょう。
チェックする項目は「稼働率」と「平均応答速度」の2つで、それぞれを順位付けしたものを総合して、総合順位をつけています。
- 稼働率(単位:%):システムやサービスが利用できる時間の割合(100%に近いほど安定)
- 平均応答速度(単位:ms ミリ秒):リクエストに対し返答を返した応答速度
要するに、「稼働率が高いほど安定」しており、「応答速度が速い」ほどより性能の高いサーバーと言えます。また、応答速度は安定性に直結するものではありませんが、Web サーバーの能力の差を見る意味でチェックをしています。
(※計測には、Site24x7 のサービスを使用)
リニューアル前 | リニューアル後 | |||
---|---|---|---|---|
計測月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 |
稼働率 | 100% | 100% | 100% | 100% |
平均応答速度 (ミリ秒) | 1,090 | 949 | 459 | 463 |
平均 | 1,020 | 461(559ミリ秒の高速化) |
安定性についても、稼働率に関してはすべての月で 100%で変化はありませんでしたが、平均応答速度はしっかり高速化したことが確認できました。
さくらインターネットは、自社で大規模なデータセンターを運営していることもあり、安定性には定評があります。稼働率の高さに関してはお墨付きと言えるでしょう。
また、応答速度もリニューアル前の1/2以下の速度になっているので、かなりのパフォーマンスアップを実現していますね。
他社との比較
スペックアップの結果は良好ではあるものの、他社と比較するとやはり見劣り
表示速度、安定性がともに向上したことが確認できましたが、他社と比較するとどうでしょうか?
リニューアル後の3月と4月のデータを比較してみましょう。
ここでは、表示速度を比較してみます。
総合順位 | サーバー名 | 3月と4月の 平均表示速度(秒) |
---|---|---|
1 | ロリポップ! | 2.31 |
2 | エックスサーバー | 2.37 |
3 | ConoHa WING | 2.38 |
4 | スターサーバー | 2.42 |
5 | ColorfulBox | 2.70 |
6 | mixhost | 2.73 |
7 | さくらのレンタルサーバ | 2.75 |
8 | heteml | 2.78 |
以上のように、heteml よりは上位ではあるものの、結局は7位と、相対的には今までと変わりのない最下位クラスという結果になりました。
安定性に関しては、稼働率は100%を維持しているので安定性は高いものの、やはり応答速度は遅めで、順位的には変わりはありませんでした。
やはり安定性は問題ないものの、高速化を望むのであれば物足りないと言えます。
まとめ
以上、さくらのレンタルサーバの全プラン大幅リニューアルの結果を見てきましたが、内容を簡単にまとめると、以下の通りです。
- サーバー基盤の刷新により、CPU、HDD→SSD などスペックアップが図られた
- 初期費用無料、全プラン転送量無制限化は、レンタルサーバー業界に大きな影響を与えた
- 実際に表示速度・安定性ともに、実力が向上したことが数値でも確認できた
- ただ、他社と比較すると、特に速度に関してはまだ下位クラスの実力に留まる
以上のように、サーバーのパフォーマンス向上が確認できたものの、残念ながら、特に速度面においては他のハイパフォーマンスのレンタルサーバーと比べると、相対的に遅い部類に入ってしまいます。
そのため、高速化を優先するのであれば、厳しい環境であると言わざるを得ないでしょう。
とはいえ、やはり運用歴の長さや会社自体の信頼の高さと安定性においては、一日の長がありますので、安心して使えるという点を優先するのであれば、さくらのレンタルサーバは十分選ぶに値するサーバーだと言えるでしょう。