レンタルサーバー選びにおいて、「安定性」の次に重要なのは「表示速度」です。
つまり、Webブラウザでサイトを表示しようとしたときに、スムーズに表示されることが重要ということです。
誰でも身に覚えがあると思いますが、ユーザーは表示速度が遅い(重い)とサイトが表示される前に閉じてしまうことがあります。
実際に米国での調査でも、ページの読み込みが遅くなるたびに顧客満足度やページビュー(表示するページ数)、コンバージョン(売り上げ成果)が低下するという結果が出ています。
私たちが考えるよりもずっと、インターネットユーザーは無意識のうちに、表示に関する快適さを大きな評価基準としているということがわかります。そして、当然ビジネスの結果にも大きく影響します。
また、近年 Google もページの表示速度を、検索結果ランキングに反映していることを明言しました。
では、レンタルサーバーにおいて、サイトの表示速度に影響を与えている要素とはなんでしょうか。また、どのようにして、選んだサーバーが十分な速度を確保できるポテンシャルを持っているかを確認できるのでしょうか。
レンタルサーバーの仕様の中で、表示速度に影響がある項目を見ていきましょう。
サーバーのスペック(CPU・メモリ等)
まず、サーバー自体のスペックです。
サーバーのスペックとして開示されているものには、CPU・メモリ・ハードディスクなどが挙げられます。
サーバーも広い意味では、私たちが普段使っているパソコンと同じコンピューターです。もちろんパソコンと比べると長時間運用などに最適化されてはいますが、根本的な仕組みは同じですので、パソコンと同じような仕様を見ていくことになります。
また、パソコン同様、これらのスペックが高いと当然処理速度が速くなりますので、サイトの表示も速くなります。また、処理が速いということは、それだけ同じ時間で多くの処理を実行できるということでもあります。
同一サーバー内で他のユーザーが負荷の高い処理をした場合でも、スペックの低いサーバーよりスペックの高いサーバーの場合のほうが、処理速度や表示に影響を与える度合いも低いといえます。
では、各項目のチェックポイントを見ていきましょう。
CPU
まずは CPU です。これはサーバーに置ける演算処理を行うための中枢で、人間だと脳にあたるパーツです。
パソコンの場合は Intel の「Core」や「Pentium」シリーズなどが有名ですが、サーバーの場合はサーバーに最適化された「Xeon」というシリーズなどが使われています。
チェックポイントとしては、クロック数とコア数です。
一般的にクロック数は、「1.8GHz」や「2.4GHz」などの数値が書かれています。このクロック数の数字が大きいほど、処理が速いと言えます。
また、コア数が多ければその分だけ並列処理が可能になるため、数が多ければ多いほど処理能力が上がります。現在は4コア~6コアが主流ですが、エックスサーバーのように最新のサーバーには16コアの CPU を採用しているところもあります。
サーバーで使用されている CPU の仕様は、レンタルサーバーの各公式サイトの仕様一覧等でチェックできますが、公開していない会社も多いです。
共用サーバーの場合は、スペック自体が高くても、複数のユーザーで共用するため、そのスペック自体を十分活用できるかどうかはその時の状況に寄ってしまいます。そのため、あえて記載していないところもあるかもしれません。また、新設していくサーバーは最新の CPU で、古くから利用しているサーバーは古いままの仕様であることも多いので、一律で記載できないという理由もあると思われます。
メモリ
メモリは情報を一時的に記憶して、処理能力を高めるパーツです。こちらも数値が多ければ多いほど、処理が速くなります。
現在は、2GB~16GBあたりが主流ですが、エックスサーバーのように最新のサーバーには96GBもの大容量メモリを採用しているところもあります。
こちらも仕様一覧などで確認できますが、CPU と同様に公開していない会社もあります。
HDD(ハードディスク)
記憶媒体としては、パソコン同様にハードディスクドライブが使用されています。
ハードディスクの細かい仕様までは公開されているところはありませんが、速度に影響するといえば、近年導入されてきている SSD の利用有無をチェックの対象にできるでしょう。
HDD よりも SSD のほうがより高速で読み出し・書き込みができますので、SSD をサーバーに採用しているところはより処理速度が速いと考えられます。
近年では、WordPress などの CMS (コンテンツマネジメントシステム)を利用するユーザーの増加により、Web データ等を保管するハードディスクには従来の HDD を、負荷がかかりやすいデータベースの保管に SSD を使用するハイブリッド方式を提供している会社が増えています。
以上が、サーバー自体のスペックに関する項目です。
続けて、表示速度に影響する他の項目を見ていきましょう。
サーバーごとの回線速度
サーバーに接続されているインターネット回線の回線速度です。
私たちが普段利用しているパソコンでも、接続している回線がADSLよりも、光回線のほうが一般的にはサイトの表示が速くなります。同様に、サーバーで使用している回線が高速であれば、それだけ表示速度も速くなります。
ただ、注意したいのは、共用サーバーの場合は、複数のユーザーで回線も共有しているため、他のユーザーの使用状況により自分のサイトの表示速度に影響が出ます。そのため、必ずしも回線速度が速ければ表示速度が速い、と言い切れないところもあります。
ちょうど、自宅で一人でネットをしているときには問題ないのに、他の家族も同時に複数の端末でネットを使うと、読み込みや表示する速度が遅くなってしまうようなイメージです。
専用サーバーであれば、常に利用できる帯域を確保したり、オプション料金を払うことで増加させることができますが、共用サーバーの場合は、自分の使用する分を保証してもらうようなことはできません。
なお、このサーバーの回線速度を公表しているところもほとんどありません。
なお、中継されるサーバーの数によっても速度に影響がでます。当サイトでは基本的に国内のサーバーしかおすすめしていませんが、海外のサーバーを利用するような場合、日本のユーザーが閲覧するまでは、いくつもの中継サーバーを経由することになります。単純に距離を想像してみればわかると思いますが、それだけ速度にも影響します。
サーバーの混雑度合い(収容人数・負荷)
サーバーの安定性の記事でも書きましたが、共用サーバーの場合は多分に他の同居人の影響を受けます。
サーバーのスペックが高く、処理が速かったとしても、同居人の数(収容人数)が多かったり、同居人が負荷の高い処理を行っていたりすると、それだけサーバー全体の処理速度が遅くなります。
私たちが日常的に使っているパソコンでも、多数のアプリケーションを同時に使用していると、パソコンの動作が重くなったり、フリーズしたりすることがあります。軽いアプリケーションであれば複数起動しても問題ありませんが、画像や動画処理のソフトなどの重いソフトを立ち上げると、他のソフトも動作が重くなったり、時にはパソコン全体がフリーズしてしまったりすることもあります。
共用サーバーの場合、各ユーザーのリソースに対する利用上限を定めて他のユーザーに影響がでないように調整してはいますが、上限に達するまではそれなりに影響を受けます。
よく、夜になると表示が遅くなったり、サーバーのツールが重くなったりするのはこれらが主な原因です。
ですから、ここでも収容人数(同居人の数)が少ないほど速いですし、同居人がサーバーに与える負荷が少ないほど速度は速くなるといえます。
PHP の処理方法や高速化
WordPress などの CMS で使用されている言語である PHP の処理方法も、表示速度に影響があります。
PHP の処理は、本来の「モジュールモード」で使用するほうが処理は速いのですが、多くの共用サーバーの場合はセキュリティの問題で 「CGI モード」という CGI でその都度呼び出す形で使用するようになっています。
ただ、レンタルサーバーの中には、技術的にセキュリティを維持しつつ、モジュールモードを利用できるようにしているところもあります。
一方、CGI モードのまま、高速化処理を行うための機能を提供しているところもあります。
例えば、エックスサーバーでは PHP や CGI による CPU 負荷を軽減し、プログラムを高速化する「FastCGI」や、Google社により開発された、ファイルを圧縮してデータ転送量を削減するなどの処理を行う、拡張モジュール「mod_pagespeed」等を利用できます。
単純にその他が同じ条件であれば、CGI モードのみを使えるサーバーよりも、モジュールモードが使えたり、高速化処理機能があるサーバーのほうが処理が速いといえます。
ただ、サーバーのスペックが高く、また PHP の処理自体が高速であったとしても、最終的には、サーバーの混雑状況など、他の要素の影響は受けます。
表示速度関連項目のチェックのまとめ
以上、表示速度に関連する項目を見てきました。チェックする項目は以下の通りです。
- サーバーのスペック(CPU/メモリ/ハードディスク)
- サーバーごとの回線速度
- サーバーの混雑度合い(収容人数・負荷)
- PHPの処理方法や高速化
以上のような項目が、サイトの表示速度に影響を与えます。
ただ、この中で同居人については自分で選ぶことができませんので、実際に使用してみないとわかりません。
そのため、レンタルサーバーを選択するする段階では、以下を目安とするといいでしょう。
- サーバーのスペック(CPU・メモリ・HDD)が高い
- 回線速度が速い
- 収容人数が少ない
基本的には「数値が大きいほうが表示速度が速い可能性がある」と考えてOKです。各スペックについては非公開の会社もまだありますので、まずはわかる範囲で比較してみましょう。
表示速度関連のスペックが高いおすすめのレンタルサーバー
表示速度関連のスペックが高く、評価が高いのは、最もバランスがよく、総合力で1位のエックスサーバー。
CPU などのサーバースペックは断トツで高く、PHP はモジュールモードは使用できないものの、モジュールモードと同様の処理能力がある「FastCGI」が利用できたり、「mod_pagespeed」や「APC / OPcache」などの機能で高速化が図られています。
また、総合で2位のカゴヤもモジュールモードのPHPが利用でき、サーバースペックも高め。セキュリティ機能が充実している点も評価が高く、おすすめです。