格安サーバーからクラウド、近年は IoT まで、20年以上にわたり幅広い分野の事業に取り組んでいる、レンタルサーバー業界のトップ企業の一つ、さくらインターネット。その共用サーバーである「さくらのレンタルサーバ」も、非常に多くのユーザーに愛用されています。
現在、さくらインターネットの共用サーバーには、月額換算で129円から利用できる「ライト」プランから、法人向けの「ビジネスプロ」プランまで、全部で 6つのプランが用意されていますが、この 5つのプランには性能にどの程度の違いがあるのでしょうか。
この記事では、さくらのレンタルサーバのプランの毎の性能の違いを、サーバー仕様とサービス面だけではなく、実際のパフォーマンスまでを、当サイト独自に調査を行った実測データをもとに、徹底的に比較してみました。
現時点の結論としては、以下のとおりです。
では、具体的に比較した内容の詳細を見ていきましょう。
さくらのレンタルサーバの各プランはサービス面に違いはあるのか?詳しくチェック
サーバーの性能を比較する前に、まず 5つのプランのサービスやサーバーのスペックの違いについて、ざっと見てみましょう。
細かい仕様などの違いについては、さくらのレンタルサーバの公式サイトを見ていただくとして、ここでは各プランの違いによって、何ができたりできなかったりするのか、その概要をわかりやすく説明してみたいと思います。
主なサービス(ディスク容量・マルチドメイン数・データベース数など)の違い
プランごとの料金差が大きいため、想定されるユーザー層とプランはおおむね決まる
プラン名 | 初期費用 | 月額費用 | ディスク 容量 | マルチ ドメイン数 | データ ベース数 | 転送量 (GB/日) |
---|---|---|---|---|---|---|
ライト | 無料 | 1,571円/年 (月額換算 131円) | 100GB | 20個 | × | 無制限 |
スタンダード | 無料 | 524円 | 300GB | 200個 | 50個 | 無制限 |
プレミアム | 無料 | 1,571円 | 400GB | 300個 | 100個 | 無制限 |
ビジネス | 無料 | 2,619円 | 600GB | 400個 | 200個 | 無制限 |
ビジネスプロ | 無料 | 4,714円 | 960GB | 500個 | 400個 | 無制限 |
さくらのレンタルサーバの場合、プラン毎にディスク容量が大きく異なっていたり、使用できるデータベース数が違うなどの差がありますので、料金~ディスク容量などを一覧にしました。
ざっと見渡すと、他社と比べてもプランごとの料金差が大きい印象があります。そのため、おおむね想定されるユーザーは決まってくる感じです。
前提として、「マルチドメイン数」(独自ドメインを設定できる数=Web サイトの作成可能数)や 「データベース数」(=WordPress の設置可能数)なども違いがあるため、ライトは WordPress の設置不可、スタンダードも WordPress サイトは 50までということがわかります。
そのため、「ライト」はメールのみ、もしくは HTML サイトのみ運用する人、「スタンダード」は WordPress を使用したい一般ユーザー、「プレミアム」はスタンダードでは物足りない一般ユーザー、ビジネス以上は法人向け、といったイメージでしょうか。
プラン選択と言う意味では、あまり迷う余地はなさそうです。
ただ、注意したいのは、さくらのレンタルサーバはプラン変更ができないこと。
他のプランに変更したいときは、一から契約をし直し、サーバー上にあるデータを全部手動で引っ越しする必要がありますので、プラン選びは非常に重要です。
サーバースペック(CPU・メモリ・高速化機能など)の違いをチェック
サーバーのスペックは大きな違いはない CPU やメモリは契約時期によっても違いがあることが
さくらのレンタルサーバ | |
---|---|
Webサーバーソフト | Apache |
記憶媒体 | SSD |
データベース | MySQL |
CPU | Intel Xeon(Cascadelake) |
メモリ | 18MB~48GB |
PHP | モジュールモード |
高速化機能 | HTTP/2 |
アクセス増対策 | ○(コンテンツブースト機能) ※スタンダード以下は有料 |
サーバーのスペックに関しては、基本的にはプランによる違いはそれほどなく、アクセス増対策である「コンテンツブースト」機能がスタンダード以下は有料になることくらいです。
さくらのレンタルサーバでは、コントロールパネルから以下のように、ユーザー自身が使用しているサーバーの具体的なスペック(使用している CPU やメモリの容量など)を確認できますが、契約時期によっても若干違うことがありますので、一概には言えません。
以下は、2022年2月に実施された大幅リニューアル後の「スタンダード」プランのスペックです。参考までに掲載しておきます。
その他の主なサービス(独自SSL・バックアップ・サポート体制など)の違い
サービス面でも全体的に大きな違いはないが、一部機能が上位プランのみ利用可能
さくらのレンタルサーバ | |
---|---|
無料独自SSL | ○(Let’s Encrypt) |
WAF(Webアプリケーション ファイアウォール) | ○ |
バックアップ | ○(Web&WPデータベース :最大8回分) |
バックアップからの復元 | ○(無料) |
プラン変更 | × |
プラン変更のタイミング | × |
ステージング機能 | スタンダード以上 |
さくらポケット | スタンダード以上 |
WebDAV | ビジネスプロのみ |
CDN 連携オプション | プレミアム以上 |
電話サポート | ○ |
アダルトサイト | × |
データセンター | 国内(東京/北海道) |
お試し期間 | 14日間 |
キャンペーン | ほぼなし |
基本的なサービス面では、プランごとの違いはありません。バックアップや電話サポートなど重要な機能についても、一番下のライトプランから利用できるのはいいですね。
一方、高度な一部の機能は上位プランのみ利用できます。
たとえば、ステージング機能は WordPress などのテスト環境を作れる機能なので、当然 WordPress を利用できるスタンダード以上が対象です。
さくらポケットは、スマホやタブレットなどから簡単にファイルを保存できる機能、WebDAV は PC などからでもサーバーの空き領域をファイル保存に利用できる機能です。
CDN 連携オプションは、さくらの CDNサービスを利用できるサービスです。CDN は、サーバーのデータを別のサーバーへキャッシュして、データの配信を肩代わりするサービスで、大量のアクセスがある企業サイトやキャンペーンサイトなどに利用されるシステムです。
なお、前述のとおり、プラン変更ができない点には注意が必要です。
さくらのレンタルサーバのパフォーマンスをベンチマークツールでチェック
では、 さくらのレンタルサーバの各プランにおけるパフォーマンスを比較してみましょう。サーバーの性能はスペックだけではわかりません。そのため、実際に各サーバーを使用して検証を行った内容から、実際の能力差を見てみたいと思います。
(※ 2021年 8月に計測したデータをもとにしています)
データの計測は各プランに設置した WordPress で比較します。
前述のとおり、ライトプランはデータベースが利用できないため除外しています。
(ライトでも SQLite は利用できるため、WordPress の設置は一応可能ですが、割と高度なスキルが必要なため、通常は使われません)
サーバーの安定性(Webサーバーの稼働率と応答速度)を比較
稼働率はいずれもほぼ 100%を記録 応答速度は上位と下位で明確に差が
まず、サーバーで最も重要な「安定性」からチェックします。
調査は Webサーバーの監視ツール「Site24x7」を利用したもので、約 7日間に渡ってサーバーの稼働率と応答速度をモニタリングした結果を比較します。
「稼働率」は、サーバーが正常に動作していた時間帯の割合で、100%に近いほどより安定していると言えます。おおむね「99.99%」程度であれば優秀です。
(※ 稼働率=(稼働時間×障害時間)÷稼働時間×100)
「応答速度」は、外部からサーバーに対してサイトのデータを送るよう命令を送った際(HTTPリクエスト)に、どのくらいで応答を返してきたかを計測したもので、数値が小さいほうが応答は速いため、より良いサーバーということになります。
プラン名 | 稼働率(%) | 応答速度(ミリ秒) |
---|---|---|
スタンダード | 100% | 957 |
プレミアム | 100% | 974 |
ビジネス | 100% | 524 |
ビジネスプロ | 100% | 555 |
稼働率はすべてのプランで 100%を達成。こちらは短期間の計測のため差は出にくいですが、安定はしています。
一方、応答速度は上位と下位でハッキリと差が出ました。当然上位が下位を上回っていますが、2倍近くの速さなので、かなり大きいです。
サイトの表示速度(WordPress の表示速度)を比較
サイトの表示速度においても、上位プランがその高速さを見せつけた
次に、各サーバーに設置した WordPressサイトの表示速度を比較してみます。表示速度の計測には、同じく Site24x7 を使用しています。こちらも約 7日間に渡る調査結果です。
結果の数値については、小さいほうが速く表示できるということを意味しますので、数値が小さいほうがより良いサーバーということになります。(計測に使用したWebサイトのデータは共通)
プラン名 | 平均表示速度(秒) |
---|---|
スタンダード | 4.67 |
プレミアム | 4.41 |
ビジネス | 3.96 |
ビジネスプロ | 3.79 |
WordPress の表示速度においても、上位下位でハッキリ差が出ました。
表示速度は、数値的に Web サーバーの応答速度ほど差は出にくいのですが、それでも下位プランは 4秒台半ば、上位プランは 3秒台後半と明確な差があると言っていいでしょう。
まとめ
以上、さくらのレンタルサーバの共用サーバー全 5プランを、 料金やサービスのスペックから実際のパフォーマンスまで詳細に比較しました。
パフォーマンス的には「スタンダード」と「プレミアム」、「ビジネス」と「ビジネスプロ」で違いはありませんでした。
そのため、基本的には用途と料金的面から見て選ぶということになるでしょう。
ちなみに、以前はスタンダードがプレミアムよりもパフォーマンスがよくなかったのですが、現在は改善されたようで、以前はスタンダードがおすすめと書いてありましたが、現在はプレミアムがおすすめになっています。
ただ、転送量もすべてのプランで無制限になったため、個人用途であればスタンダードでしょう。
本当に最低限(メールのみ運用など)なら「ライト」、 一般ユーザーで WordPress 利用なら「スタンダード」、法人である程度アクセスが多いなら「ビジネス」が基本で、ケースバイケースで「プレミアム」「ビジネスプロ」を選ぶ感じで問題ありません。
ブログやアフィリエイトなど、一般的なネットビジネスを行うのなら、料金的にも負担の少ない「スタンダード」プランがおすすめです。