レンタルサーバーの利用用途として、Webサイトの公開に次いで多いのがメールの運用でしょう。そういう意味でも、メールの仕様とセキュリティ機能は重視したいところです。
今や格安サーバーでもメールアカウントを無制限に作れるなど、一昔前と比べても非常に充実してきてはいますが、実際にメールを運用する上ではもう少し突っ込んでチェックしておきたいポイントがあります。
今回は当サイトで紹介しているレンタルサーバーについて、メール関連の主な仕様とセキュリティ関連機能の比較をしてみたいと思います。
レンタルサーバーのメール関連の仕様比較
まずは、レンタルサーバー各社のメールシステムに関する主な仕様を比較してみましょう。
メールシステム関連の仕様比較一覧
メール関連の仕様 | メールアカウント数 | エイリアスアカウント(別名) | メールアカウント毎の容量上限 | メールボックス容量設定 | メール転送 | メール自動返信 | IMAP |
---|---|---|---|---|---|---|---|
エックスサーバー | 無制限 | × | 5GB | ○ | ○ | ○ | ○ |
カゴヤ | 無制限 | × | 100GB | ○ | ○ | ○ | ○ |
さくらインターネット | 無制限 | × | 40GB | ○ | ○ | × | ○ |
heteml | 無制限 | × | 10GB | × | ○ | ○ | ○ |
クローバー | 無制限 | × | 2000MB | ○ | ○ | ○ | |
ABLENET | 無制限 | ○ | ディスク容量内 | × | ○ | ○ | × |
WADAX | 無制限 | × | ディスク容量内 | ○ | ○ | ○ | ○ |
ロリポップ | 無制限 | × | 2GB | × | ○ | ○ | ○ |
お名前.com | 無制限 | × | ディスク容量内 | △ | ○ | ○ | ○ |
WebARENA | 無制限 | × | ディスク容量内 | ○ | ○ | ○ | ○ |
Bizメール&エコノミー | 無制限(推奨100個まで) | ○ | ディスク容量内 | × | ○ | ○ | ○ |
SpeeVer | 無制限 | ○ | 2GB | ○ | ○ | ○ | ○ |
iCLUSTA+ | 10個 | ○ | ディスク容量内 | × | ○ | ○ | ○ |
まず、作成可能なメールアカウント数ですが、ほとんどが無制限に作成できます。その中で、iCLUSTA+ の 10個 というのが目立ちますね。
iCLUSTA+ は複数の(管理者)ユーザーを作ることができるなど、法人でも使えるようなシステムになっているのですが、その仕様で作成できるメールアカウントが 10個というのは厳しい気がします。
次に、メールエイリアス(別名)の項目ですが、これはメールボックスを同一にする他のメールアドレスを作れる機能です。
これはどういうときに使うかというと、例えば複数の役職を持っていて、対外的にメールアドレスも使い分けたいけれど、整理が面倒なので同一のメールボックスで受信したい、というような場合です。
例:ABCDEFG株式会社のマネージャー兼デザイナーの場合
役職1 | マネージャー | manager@abcdefg.com |
役職2 | デザイナー | designer@abcdefg.com |
通常はアカウント設定が2つ必要で、別々のメールボックスに受信されるが、メールエイリアス機能を使うと、アカウント設定が1つで、かつ同じメールボックスに受信される
この機能は利用できる会社はあまり多くありませんね。ただ、必要とされるケースもそれほど多くはないと思いますので、特に重要視する必要はないと思います。
一方、次のメールアカウント毎の容量上限は重要です。
一昔前に比べれば、メールの容量上限もかなり大きくなりましたが、メールというのは意外に溜まってくるものです。特に仕事で利用したり、広告メールやメルマガなどを購読しているなど、使い方によっては気が付かないうちにかなりの容量に達しているということもあります。
長期間利用するのであれば、定期的にメンテナンスするか(不要なメールを削除し、バックアップを取るなど)、あらかじめ容量の大きいサーバーを利用するといいでしょう。
なお、「ディスク容量内」と書いてあるレンタルサーバーは、メールアカウント自体の容量上限はなく、Webサイトとメールの容量など使用している領域のトータルで、既定のサーバー容量まで利用できる、という意味です。
カゴヤと iCLUSTA+ に関しては、メールと Webサイトのディスク容量が分かれているので、Webサイトの容量を気にする必要はありません。
次のメールボックス容量設定は、メールアカウントごとの容量上限の設定可否です。
よく使うメールアカウントは上限を最大に、ほとんど使わないメールアカウントは最小にすることで、トータルでのサーバー容量を節約することができます。
お名前.comレンタルサーバーはメールアカウントごとの上限設定はできないのですが、すべてのメールアカウントがトータルで利用する容量の上限を設定することができる、という点で「△」にしています。
メール転送は特定のアカウント宛に来たメールを他のメールアカウントに転送する機能、「メール自動返信」はメールを受信したら自動的にあらかじめ設定したメッセージを返信する機能です。ビジネス用途で、休暇などの不在時に「○日まで不在のため、○日以降に返信いたします~」などのメッセージを返信するのに使えます。
最後の IMAP ですが、格安サーバーでも利用できるのに、未だに ABLENET が利用できないため、一応比較としてピックアップしておきました。
レンタルサーバーのメール関連のセキュリティ比較
次に、メール関連のセキュリティ機能を比較してみたいと思います。
メール関連のセキュリティ比較一覧
セキュリティ関連 | アンチウィルス | スパムフィルター | SMTP over SSL | POP over SSL | IMAP over SSL | SMTP国外IP制限 |
---|---|---|---|---|---|---|
エックスサーバー | F-Secure | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
カゴヤ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
さくらインターネット | F-Secure | Spam Assassin | △ | △ | △ | × |
heteml | F-Secure | F-Secure | ○ | ○ | ○ | × |
クローバー | F-Secure | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
ABLENET | (オプション) | ○ | ○ | ○ | × | × |
WADAX | ○ | Cloudmark/SVM | ○ | ○ | ○ | × |
ロリポップ | F-Secure | F-Secure | ○ | ○ | ○ | × |
お名前.com | ○ | (オプション)Cloudmark Authority | ○ | ○ | ○ | × |
WebARENA | Symantec | Symantec | ○ | ○ | ○ | × |
Bizメール&エコノミー | Clam AV | Spam Assassin | ○ | ○ | ○ | × |
SpeeVer | Dr.Web | Spam Assassin | ○ | ○ | ○ | × |
iCLUSTA+ | Symantec | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
まず、アンチウイルスとスパムフィルターですが、利用しているエンジンの提供元がわかっているものについて、ブランド名を記載しています。こうして一覧にしてみると、各社の採用度合いがまるっきりバラバラだということがわかります
ブランドによって性能が大きく変わるということはないと思いますが、エンジンによって検知率などに若干の差はあるでしょう。やはり、ブランド力というか、メジャーなブランド名があるものは信頼性が高そうに思います。
また、時代的に必須なこれらの機能も、まだ有料のオプションで提供している会社も若干あることがわかります。(ABLENET と お名前.comレンタルサーバー)
次の SSL 関連の 3項目は、メールの暗号化機能です。厳密にいうと、SMTP も SSL ではなく、TLS が使われていたり、暗号化の方式も若干異なりますが、ここでは「暗号化の有無」という点でまとめて記載しています。
さくらインターネットは、独自ドメインを利用している場合でも、メールサーバーにさくらインターネットのサーバー名を指定しないと使えないということなので、「△」としています。
最後のSMTP国外IP制限ですが、これは簡単に言うと、海外から自分の使用しているメールサーバーを通してメールを送信できないようにする設定で、SPAM メールの踏み台にされないようにするために非常に有効な機能です。これはエックスサーバー系列のエックスサーバーとクローバーのみが利用可能です。
レンタルサーバーのメール関連の仕様とセキュリティを比較まとめ
以上、メール関連の機能とセキュリティについてまとめてみました。
上記の表に記載した以外にも、各社に細かい機能があったり、以下のようなユニークな機能を用意しているレンタルサーバーもあります。
・iCLUSTA+:「ディスク使用率が警告値に達した場合に警告メールを送る機能」
・Bizメール&ウェブエコノミー:「ホワイトリスト・ブラックリスト(メール受信許可/拒否リスト)」
・ABLENET:「Catch Allアカウント(アカウントが存在しない独自ドメインあてのメールをすべて受信するアカウント)」
あくまで補助的な機能のため、これがどうしても必要、ということはないと思いますが、利用できると便利かもしれませんね。
今回チェックした機能の中で重要なのは、やはりメールアカウントの容量上限に関する機能でしょうか。受信数が多いと、最悪仕事で重要なメールを受け取れないような事態が発生してしまうこともありえます。
また、メールの容量設定が可能なところは、容量上限の初期設定が低くなっているところも多いため、メールアカウント作成時に容量の上限も調整しておくといいでしょう。
メールアカウントが多数あったり、複数のユーザーで利用しているなどの理由で、ディスク使用量をチェックするのが面倒であれば、あらかじめ十分な容量を確保でき、メールサーバーが Webサーバーと物理的に別のサーバーで安定して運用できるカゴヤがおすすめです