2016年12月14日に さくらのレンタルサーバが、待望のPHP 7.1の提供を開始しました。
以前のバージョンよりパフォーマンスが高い PHP7 は、エックスサーバーを筆頭に、heteml(ヘテムル)など数社でもすでに提供されていますが、とうとう今回レンタルサーバー業界最大手の一つであるさくらインターネットでも、PHP7 の提供が開始されたわけです。
そこで今回は、さくらのレンタルサーバでの PHP7.1 のパフォーマンスを、各種ベンチマークツールで検証してみたいと思います。
・話題の PHP 7 は本当にパフォーマンスが高いのか?
・さくらインターネット「プレミアム」の検証・評価レビュー
さくらのレンタルサーバのPHP7.1の提供概要
今回、さくらのレンタルサーバで提供が開始されたのは、最新バージョンである「PHP7.1」です。
PHP7.x は、以前のバージョンである PHP5.x からの大幅なバージョンアップで、パフォーマンスが非常に高くなった半面、以前のバージョンとの互換性があまりないバージョンです。
そのため、おそらくさくらインターネット側では、他社に先んじて PHP7 を導入しようとはせず、時間をかけてしっかり検証等を行い、PHP7.1 に至って導入に踏み切ったのかもしれません。
あわせて、クイックインストール(簡単インストール機能)で提供している WordPress や Concrete5 などについても、PHP7.1対応版にバージョンアップしているとのこと。確かに WordPress は、PHP7.1 対応の最新バージョンにアップグレードされていました。
PHP7 は、PHP5 と比較して非常にパフォーマンスが高いため、PHPアプリケーションの実行速度が高速化すると言われています。そこで、早速さくらのレンタルサーバの環境で、そのパフォーマンスの向上具合をチェックしてみたいと思います。
なお、さくらインターネットで利用できる PHP は「CGI版(CGIモード)」のみで、さらにパフォーマンスの高い「モジュールモード(モジュール版)」は、まだ利用できません。
検証したサーバースペック
今回は、以前検証でチェックしたデータと今回新たにチェックしたデータを比較してみたいと思いますが、その前に検証に利用したサーバーのスペックを確認してみましょう。
利用したのは、当サイトでレビューしているネットビジネス向けの「さくらのレンタルサーバ プレミアム」プランです。さくらインターネットの場合は、非常に良心的なことに、コントロールパネルから自分が利用しているサーバーのスペックを確認できます。
すると、前回検証した際のスペックと全く同じ、以下のスペックでした。
- ・CPU:Intel Xeon E312xx (Sandy Bridge)
- ・メモリ:18GB
- ・Apache:Apache/2.2.31
PHP7.1 のパフォーマンスをベンチマークツールでチェック
では、実際に PHP7.1 のパフォーマンスが、現在の標準バージョンである PHP5.6 と比較して、どのくらいアップしているのかをベンチマークツールでチェックしてみましょう。
今回は、PHP の処理速度などをチェックするベンチマークツールである「PHP Benchmark」と、Webサーバーのパフォーマンスをチェックする「ApacheBench」で測定し、以前のサーバー環境でのデータと比較してみました。
PHP Benchmark
PHP の処理のパフォーマンスを測定するスクリプト「PHP Benchmark」を使用したベンチマークテストです。
数値は「既定の処理が終わるまでに要した時間(単位:ミリ秒)」で、値が小さいほうがパフォーマンスが高いです。
前回実施した測定の詳細記事はこちら(PHP Benchmark でレンタルサーバー各社のパフォーマンスを比較)
最小値 | 最大値 | 12回の平均値 | 中間値の平均値 | 最大値と最小値の差 | |
---|---|---|---|---|---|
前回(PHP5.6) | 15 | 41 | 19.1 | 18.4 | 26 |
今回(PHP5.6) | 16 | 30 | 19.9 | 19.1 | 14 |
今回(PHP7.1) | 10 | 21 | 11.7 | 11.4 | 11 |
まず比較してみたいのが、PHP5.6 と PHP7.1 の数値です。明らかにすべての値で PHP7.1 が小さくなっている、イコール、パフォーマンスが上がっていることを示しています。また、「最大値と最小値の差」が小さくなっていることから、処理におけるブレも少なくなっていることがわかります。
また、PHP5.6 の結果については、前回と今回でほぼ誤差の範囲と言えますが、今回は「最大値と最小値の差」が若干小さくなっているため、ブレが少なくなっているようにも見えます。
PHP Benchmark は、PHP による単純な処理のパフォーマンスを見ることができるため、他のツールと比較してもそのパフォーマンスの差がはっきり出ます。ここでは、PHP7.1 のパフォーマンスの向上をはっきり見ることができました。
ApacheBench
次は、Webサーバーのパフォーマンスを測定するベンチマークツール「ApacheBench」を使用したテストです。
静的な HTTP と 動的な PHP などのファイルでは結果が異なるため、その両方でテストを行っています。
数値は「1秒間に処理したリクエスト数(Requests per second)」で、値が大きいほうがパフォーマンスが高いです。
前回実施した測定の詳細記事はこちら(ApacheBench で Webサーバーのパフォーマンスを比較)
■HTTP Requests per second | ■PHP Requests per second | |
---|---|---|
前回(PHP5.6) | 1146 | 5.61 |
今回(PHP5.6) | 1252 | 2055 |
今回(PHP7.1) | 1230 | 2051 |
まず、今回の PHP5.6 と PHP7.1 のパフォーマンスを見比べてみると、HTTP・PHP ともに、ほとんど数値に変わりがありません。どちらのバージョンでも同じパフォーマンスしか出ていないことになります。
一方、前回と今回の PHP5.6 の数値を見比べてみると、HTTP・PHP ともに数値の向上が見られます。サーバーのスペックやApache のバージョン自体にも変化はないのですが、特に PHP の数値において大幅な上昇がみられます。
普通に考えると、サーバー自体に何の変化がなければ、PHP の処理を介さない HTMLサイト(HTTP)の処理と PHP5.6 の前回と今回の値は大きく変化しないはずなのですが、どちらもパフォーマンスが向上していますね。上記のデータは同日にチェックしていますが、時間帯はかなり分散して 5~ 8回実施していますので、たまたま高い結果が出たとは考えにくいです。(後日確認しても、前回のような数値は出ませんでした)
これについては理由がよくわからないのですが、以下のいずれかが原因かもしれません。
・今回利用したサーバーが、前回利用したサーバーより負荷の高いユーザーが少なかった
・さくらインターネット側でサーバーのチューニング等を行ったことにより、前回よりパフォーマンスが上がった
そこで、次に処理量が多い状態でのレスポンスの差をチェックするため、テキスト量が多めの WordPress サイトでも ApacheBench を実施し、テキスト量がやや少なめの WordPress サイト(上のテスト結果)の結果と比較してみました。
テキスト量少 | テキスト量多 | |
---|---|---|
今回(PHP5.6) | 2055 | 1872 |
今回(PHP7.1) | 2051 | 2250 |
すると、PHP5.6 ではテキスト量が多くなった場合、1秒間に処理した量が減っているのに対し、PHP7.1 ではテキスト量が多くても処理量に変化はなく、むしろ若干処理量が上がっているように見えます。
そのため、文字数が少なめの WordPress サイトではあまり変化は見られませんが、PHP での処理量が増えると PHP7.1 のほうがパフォーマンスが高いことがはっきり見える、と言っていいかもしれません。
以上 2つのテスト結果から、さくらのレンタルサーバにおける PHP7.1 のパフォーマンスに関しては、
- 状況によってはそれほど大きなパフォーマンスの変化が見られないこともあるが
- 基本的な PHP の処理効率は上がっており(PHP Benchmark)
- 処理量が増えるとPHP5.6 よりパフォーマンスも高くなる(ApacheBench)
と結論付けられると思います。
さくらのレンタルサーバがPHP7.1を提供開始!早速パフォーマンスを検証まとめ
以上、さくらのレンタルサーバにおける PHP7.1 の概要とパフォーマンスの検証結果をまとめてみました。
結果としては少しわかりにくかったかもしれませんが、PHP7.1 は PHP5.6 と比較すると、やはり高いパフォーマンスが出ているといっていいと思います。
また、これは意外な結果でしたが、全く同じスペックのサーバー環境だったにもかかわらず、ApacheBench では PHP5.6 でも PHP の処理が関係しない HTML サイトでの結果でもパフォーマンスが少し高くなっていました。さらに、今回の結果では、WordPress のパフォーマンスもかなり向上していました。
さくらインターネットの場合、HTML サイトのパフォーマンスは悪くないのですが、WordPress など CMS の動作は遅いという印象がありました。もちろん、今回たまたまよいサーバーに当たっただけという可能性も否定はできませんが、もしなんらかの理由でサーバー自体の基本的なパフォーマンスが向上したのであれば、さくらのレンタルサーバもより使えるサーバーになったと言えますね。
元々人気が高いレンタルサーバーだけに、今後もこのパフォーマンスが維持されることを期待したいところです。