mixhost(ミックスホスト)が2017年12月5日に、プランのリニューアルを行いました。また、サーバーの回線速度の増速や転送量目安の変更など、ユーザーにとってはメリットの大きい、多数の仕様変更も行われています。
そして、今回の目玉は、なんといっても日本のレンタルサーバーで初の導入となる、新プロトコル「QUIC(クイック)」への対応。QUIC は Google が開発した最新の通信規格で、表示速度を高速化することができます。
mixhost は従来でも十分 Webサイトの表示が速いサーバーでしたが、今回の QUIC 導入でどれだけ速度が向上したのか気になりますね。
では、今回のリニューアル内容、および「QUIC」の概要と、「QUIC」導入で実際どれくらい表示速度が高速化したのか、実際に計測した結果もあわせて紹介していきたいと思います。
日本初!表示速度を高速化するQUIC対応
今回 mixhost が導入した、「QUIC(Quick UDP Internet Connections)」は、Google が開発した先進的なテクノロジーで、Webサイトの表示速度を高速化する「トランスポートネットワークプロトコル(トランスポート層の通信規格)」です。
Webサイトや画像、動画などのデータをやりとりするためのプロトコル(通信方法を定めた決まり事)の代表として、「TCP」と「UDP」の 2つがありますが、この 2つのプロトコルはその性質に応じて、やり取りするデータの種類が使い分けられています。
簡単にその特徴を説明すると、
- TCP(Transmission Control Protocol):データの正確性を重視しており、その分速度は遅め
- UDP(User Datagram Protocol):通信速度を重視しており、その分データの重複や欠損が発生することがある
それぞれの性質から、主に速度より正確性が要求される Webサイトやメールの通信には「TCP」が、正確性よりリアルタイム性や速度が要求される動画などデータのやりとりには「UDP」が用いられています。
そして、この「QUIC」は、TCP より高速な UDP を使用して高速化を図りつつ、同時に TCP と同じ通信の正確性や安全性を確保することができるように設計されているため、従来通りに Webサイトの表示をしつつ、速度も向上させることができます。
(Next generation multiplexed transport over UDP (PDF)より引用)
また、この QUIC は 従来の HTTP/2 の欠点を補うプロトコルでもあります。mixhost では、HTTP/2 も日本で一番早く導入していましたが、この QUIC を導入することにより、HTTP/2 以上の表示速度が出せるようになりました。
・HTTP/2の仕組みやメリットの解説とHTTP/2対応レンタルサーバーの紹介
なお、この QUIC は、現時点で Google Chrome(2013年8月以降にリリースされたもの)と Opera だけが対応しています。また、HTTP/2 同様、正規の認証局から発行されたSSL証明書や「https://」でのアクセスが必要と言った条件もあります。
この「QUIC」はまだ十分世間に浸透していませんが、Google はすでに 2015年にサーバーの既定のプロトコルに変更していますので、今後間違いなく利用範囲は拡大していくでしょう。
以上、QUIC について、できるだけわかりやすく単純化して説明しましたが、QUIC の詳細な内容について知りたい場合は、以下のサイトがわかりやすいと思います。
その他の変更点など
他にも色々と、仕様上に大きな変更が加えられましたが、特に多くのユーザーにとって重要なものを挙げます。
- ストレージ容量の増強
- サーバーの回線速度の増速(サーバー1台辺りの回線速度を、従来の10倍以上に)
- メール送信数制限の緩和(全プラン共通で100通/時→最大3,500通/時)
- 転送量目安の変更(1日単位→1か月単位に変更)
- 長期契約プランの導入(24・36ヶ月契約が追加され、より安く)
- ハイスペックな上位プランの導入(エンタープライズプラン)
回線速度の増速は、夜間帯の速度低下などを防ぐことができますし、転送量目安の変更はバズなどによる、一時的なアクセス急増対策としても非常に効果が高いですね。
また、mixhost は、提供開始時からストレージを高速な SSD で提供していましたが、その分ディスク容量が既存のレンタルサーバーと比較すると少なめでした。2017年7月にもディスク増量を行っていましたが、今回さらに増量が行われましたので、これでもう容量が不足だと感じる人はいなくなるでしょう。
なお、今回の改定で、最安のプランである「エコノミープラン」が廃止となってしまいました。月額500円以下ながら、マルチドメイン・データベース数がともに無制限という、まさに夢のようなプランだったのですが、やはりサービス的に維持するのが難しかったようです。
QUIC対応で、表示速度は高速化されたか?
さて、今回の「QUIC」対応により、実際にどのくらい表示速度が高速化されたかを WordPress で作成した Webサイトで確認してみましょう。
サイトの表示速度の測定は、サイト速度のパフォーマンスを確認できる GTmetrix にて行っています。GTmetrix では、計測に Google Chrome を使用しているので、「QUIC」の効果は出ると考えられます。
(GTmetrix では、2017年11月14日更新の最新版が使用されている)
変化の度合いを確認するために、今回の結果と以下の記事で実施した検証データを比較します。検証の条件は、前回のノーマルサイトと全く同じです(スタンダードプラン+PHP7.0)。
・HTTP/2によるサイト表示速度の変化を徹底検証(ロリポップ!・mixhost・エックスサーバー)
表の数値はサイトの表示に要した速度で、単位は「秒」、間の「差分」は以前の環境と QUIC対応後の速度差です。(プラスなら遅い、マイナスなら速い)
SSLなし 平均値 | 最小値 | 最大値 | SSLあり 平均値 | 最小値 | 最大値 | |
---|---|---|---|---|---|---|
旧環境 | 1.49 | 1.20 | 1.90 | 1.53 | 1.00 | 2.60 |
新環境 | 1.64 | 1.50 | 1.80 | 1.26 | 1.10 | 1.40 |
差分 | 0.16 | 0.30 | -0.10 | -0.27 | 0.10 | -1.20 |
まず、「SSL なし」は、最小値から最大値まで、すべて今回のほうが表示速度は遅いです。もしかすると、今回は契約初日に検証を実施していますので、その影響かもしれません(契約初日は、他のユーザーなどの影響でサーバーの負荷が高まる傾向があるため)。
一方、「SSL あり」は、平均値と最大値の速度が向上しています。今回の「QUIC」は、HTTP/2 と同様、SSL(https://~)での通信が必要ですので、こちらが QUIC での表示速度になる訳ですが、平均値で見事に「0.3~0.5秒」も短縮しています。
注目したいのは、同じ環境通しで比べた場合(左と右を比較)、旧環境同士では「SSL なし」のほうが速かったのに対し、今回は「SSL あり」のほうが明らかに速いことです。
前回の「SSL あり」は HTTP/2 による通信になっており、「HTTP/2によるサイト表示速度の変化を徹底検証」の記事の結論に書いたように、HTTP/2 にしたところで確実に速くなるといった結果にはなりませんでした。
しかし、今回の「SSL あり」=「QUIC」では、ハッキリと速くなっているのがわかりますので、確かに QUIC の効果はかなり高いことは間違いありません。
なお、PHP5.6 でも検証したのですが、平均値は 1.3秒でした。これまでトップであったエックスサーバーの 1.24秒とほぼ同等になりました。(他のサーバーと比較すると誤差の範囲と言っていいレベル)。そのため、mixhost も表示速度においては、トップと言っても過言ではないレベルになったと言えるでしょう。
まとめ
以上、mixhost の「QUIC」対応とプランリニューアルについて、その概要と実際の表示速度変化について確認してみました。
mixhost は、サービス開始当初から、新機能やサーバーのパフォーマンスなどに関して、他社と比較して頭一つ、いや二つ以上抜け出た状況でしたが、その後は大きな更新などもなく 1年半近くが経過しました。
その間に、他社も HTTP/2 や無料の独自SSL を導入するなど、追いつき追い越せ、といった勢いで迫ってきていましたが、今回「QUIC」という大きな武器を引っ提げてきたことで、検証結果通り、名実ともに最速のサーバーになりました。まさに、面目躍如と言えます。
コスパが良すぎた、エコノミープランがなくなったのは残念ではありますが、スタンダードプランも長期契約ではさらに割引になり、最大のライバルであるエックスサーバーよりも安くなりましたので、性能と比較すると十分コスパは高いです。
また、QUIC ほど目を引きませんが、サーバーの回線速度の増速や転送量目安の変更なども、ユーザーにとっては非常に大きなメリットがありますので、mixhost のことが気になっていた人は、この機会に10日間の試用期間を利用して、その性能の高さを堪能してみるといいでしょう。